レオロジー工学

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高分子の相状態の変化と分子構造

高分子の相状態

高分子は、分子鎖が不規則に並んだ非結晶性高分子と、分子間相互作用や分子内相互作用によって分子が規則的に並んだ部分を有する結晶性高分子に分類できる。一般に、分子量に分布がある高分子中のすべての領域を規則的に並べることは不可能であり、結晶性高分子内には結晶性領域と非結晶領域が混在している。

分子量が十分に大きな高分子を徐々に加熱して温度を高めると様々な状態変化がみられる。それらの状態を次に占める。

  • 非結晶性高分子 低温度 ガラス状態 → ゴム状態 → 遷移状態 → 粘性液体状態 高温度
  • 結晶性高分子 低温度 剛性結晶状態 →(ガラス転移温) 屈曲性結晶状態 →(融点) ゴム状態 →(流動温度) 遷移状態 → 粘性液体状態 高温度

分子構造

炭素鎖にパラフェニレン基のような環状構造の導入は、著しく硬さを増す。

これは、C-Cの回転はCにかさ高い置換基が導入されるほど生じにくくなり、ガラス転移温度も高くなる。この理由から、ポリプロピレンがポリエチレンより高いガラス転移温度を持っている。

ポリマー骨格への二重結合の導入はガラス転移温度を低下させる。

一見、二重結合の導入は剛直性を増してガラス転移温度を上げる役割を果たしそうであるが、隣接する骨格の回転は立体障害の低下(二重結合の側鎖は1本少なくなる)によって生じやすくなるので、全体的にはポリマー鎖の屈曲性を高めてガラス転移温度を下げる。

ポリマー鎖への極性の高い側鎖の導入はガラス転移温度は増加する。

双極子相互作用によって(ポリマー鎖が結晶化しやすくなって??)高いガラス転移温度を持つためである。

ポリマーへの(規則構造を壊す)側鎖や分岐の導入は結晶化を阻害する

単純な構造の方が結晶化はしやすい。

例として、高圧化で作られたポリエチレンは分岐が多く低密度ポリエチレンとよばれて結晶化しにくい。また、ポリエチレンを部分的に塩素化した物は規則構造を壊すため結晶化しにくい

ポリマーの立体規則性も重要

https://info.ouj.ac.jp/~hamada/TextLib/rm/chap9/Text/Cr990903.html
  • アイソタクチック →官能基が一方に規則的についているやつ
  • シンジオタクチック →官能基が交互に規則的についているやつ
  • アタクチック →官能基がランダムについているやつ

上記の構造のうち、アタクチックポリマーは構造が乱雑なので結晶化することができない

https://pigboat-don-guri131.ssl-lolipop.jp/734%20Natural%20rubber%20and%20synthetic%20rubber.html

また、二重結合を含む高分子では結晶性はcis,transの異性体構造にも関係する。

例えば、

  • cis-1,4-polyisoprene ガラス転移温度-73℃、結晶の溶融温度 25℃
  • trans-1,4-polyisoprene ガラス転移温度-53℃、結晶の溶融温度 65℃

という風に、trans型の方がcis型よりも結晶化しやすく、剛性の強い性質をもち、またガラス転移温度が高くなる。

以上をまとめると

環状構造の導入ガラス転移温度は上がる
二重結合の導入ガラス転移温度は下がる
極性の高い側鎖の導入ガラス転移温度は上がる
(規則構造を壊す)側鎖や分岐の導入ガラス転移温度は下がる
ポリマーの立体規則性アタクチックは結晶化しない
異性体trans型のほうが結晶化しやすい

ガラス転移温度

No10_4.jpg
https://ansysapdl.blog.fc2.com/blog-entry-14.html?sp

高分子の温度を上げていき、ガラス転移温度(\(T_g\))を超えると高分子がガラス状態からゴム状態へと変化して、高分子のミクロブラウン運動が始まることで弾性率が大きくなる。

体積上昇(ガラス転移温度を超えると体積膨張率上昇)
誘電率ガラス転移温度付近で急上昇
弾性率ガラス転移温度付近で急下降
tanδ(位相遅れ)ガラス転移温度付近のみ上に凸
比熱ガラス転移温オ付近で急上昇

ゴム弾性の特徴

弾性に関する熱力学基本式は、外力がない場合の内部エネルギー変化dUに外力である\(fdL\)が加わったものである。

$$dE=fdL+dU  ①$$

ここで、内部エネルギーは\(dU=TdS-pdV\)であるから、

$$dE=fdL+TdS-pdV$$で内部エネルギーが表せる。ここで、体積変化dVは微小であるので無視できると考えると(※もし仮に理想的なゴムの場合エントロピー弾性を示し、エントロピー変化のみを考えるので、dEを無視する

$$dE=fdL+TdS → fdL=dE-TdS  ②$$である。

②式をもとに温度に対する弾性力の変化を考える。

エントロピー変化が支配的な条件下(dE ~ -TdS)では、伸張dLによりエントロピーが減少しなければf>0にならないので試料に張力が働かない。

この時(\(dS<0\))、張力は温度上昇と共に増大する。

一方、内部エネルギーの変化が支配的な場合、温度変化に対する張力の変化は小さい。

次に②式をギブスの自由エネルギーの定義式(G=E+pV-TS)に代入して、

$$dG=dE+VdP+PdV-TdS-SdT$$

$$dG=fdL+VdP-SdT$$

ここで、dGをT,Lでそれぞれ偏微分して

$$(\frac{\partial G}{\partial T})_{p,L}=-S  ③$$

$$(\frac{\partial G}{\partial L}_{p,T})=f  ④$$

となる。

また、偏微分する順序は変わっても計算結果は同じなので

$$[\frac{\partial}{\partial L}(\frac{\partial G}{\partial T})_{p,L})]_T=[\frac{\partial }{\partial T}(\frac{\partial G}{\partial L}_{p,T})]_L  ⑤$$

である。

③、④を⑤式に代入すると、

$$-(\frac{\partial S}{\partial L})_{p,T}=(\frac{\partial f}{\partial T})_{p,L}  ⑥$$

チェーンルールを用いて

$$(\frac{\partial S}{ \partial L})(\frac{ \partial L}{ \partial T})(\frac{ \partial T}{ \partial S})=-1$$

チェーンルールの式を変形して

$$-(\frac{ \partial S}{ \partial L})_{p,T}=(\frac{ \partial T}{ \partial L})(\frac{ \partial S}{ \partial T})  ⑦$$

定圧過程では、

$$dH=C_pdT=TdS$$

であるので、この等式から

$$(\frac{\partial S}{\partial T})_{P,L}=\frac{C_p}{T}  ⑧$$

⑥、⑦、⑧式より、

$$(\frac{ \partial T}{ \partial TL})_{p,S}=\frac{T}{C_p}(\frac{ \partial f}{ \partial T})_{p,L}$$

である。

ゴム状態の高分子では\(partial f/\partial T)_{p,L}が正となって、断熱伸張させると温度が上昇する。

ゴム弾性の温度依存性

弾性力の支配的な因子として、「内部エネルギーの変化」、「エントロピーの変化」の二つがある。前者をエネルギー弾性、後者をエントロピー弾性とよぶ。

ゴムはエントロピー弾性で、温度依存性が非常に高く、温度上昇と共に弾性率が上昇する。

一方で、無機物質は一般的にエネルギー弾性を示し、温度依存性はないので温度変化しない。

流体の粘性

粘度の定義→

せん断速度勾配

上の図は2枚の平板間に流体を挟んで上の板を一定の速度で動かすと、定常状態では右図のように一定の速度勾配(せん断速度)が生じる。

この時の板に加わる応力τとせん断速度\(\frac{du}{dy}\)を用いて、粘度は

$$\eta = -\frac{τ}{du/dy}$$

で定義される。

気体の粘性

maxwellの理論に従えば、気体分子は速度勾配のある「せん断場」で衝突を繰り返すことで、1回の衝突で平均して\(mλdu/dy\)に比例する運動量を輸送する。

ここでmは分子の質量、λは平均自由行程である。

したがって、分子の単位体積当たりの分子数をn、分子の平均速度を\(c \)とすると、

単位時間あたりに単位界面を通して上下に移動する分子の数は、あらゆる方向から飛んでくる分子を全角度に対して平均化すると\(\frac{nc}{2}\)である。よって

$$τ = \frac{1}{2} ncmλdu/dy$$

となる。一方で、

$$λ = (\frac{1}{nd^2})^{-1}$$

溶液の粘性

  • ニュートン流体 →粘度(せん断応力の変化)がせん断速度によらず一定の時の場合
  • 擬塑性流体 →降伏応力がなくせん断速度の増加と共に粘度(せん断応力の変化)が低下する場合
  • ダイラタント流体 →せん断速度の増加と共に粘度(せん断応力の変化)が増加する場合

ダイラタンクシー

静止状態で粒子が最密充填に近い状態にあり、その間隙に液体が存在する場合、流動が生じると粒子間の感激の体積が増えなければならない。急激な外力によって一時的に最密充填から最粗充填へ変化するときに、気体が吸い込まれなければならない条件では、粒子同士の摩擦と表面張力の影響で粘性が増大することで発現する。

粘性の理論

  • Eyringの理論
  • Doolittleの粘度式 →\(\eta =Aexp(\frac{Bv_0}{v_f})\)ここでの\(v_f\)は自由体積で\(v_0\)は溶液体積である。
    1. 温度Tは式の中にはなく、自由体積が温度の関数であり、温度を上げると、exp(~)が減少するので粘度は減少する。
    2. 圧力を上昇させると自由体積が減少して粘度が大きくなる。(ただし、溶液の内部エネルギーは非常に大きいので高圧にならないとこの影響は出ない)

電解質の粘度

水に電解質を添加する場合、添加する電解質の種類や濃度によっては、電解質の水溶液の相対速度が増加する場合と、低下する場合が見られる。

例えば、塩化カリウムを添加すると相対粘度が低下する。

これは、\(K^+\)がイオン半径が大きい「構造破壊イオン」と呼ばれて、水分子とカリウムイオンの静電相互作用により水の構造を崩す効果があるためである

また、同じ1価でもイオン半径の小さ\(Na^+\)では、イオン半径の小さなところに電荷が集中しているので大きな静電気力で構造形成を強める。

しかし、高温状態では、構造破壊イオンによって破壊された構造よりも破壊されるためどんなイオンであれ構造形成の効果があらわれるので、高温下ではイオンを添加すれば粘度は増加する。

線状高分子溶液の粘性

タンパク質は水溶液中では疎水基を内側にして表面に親水性の置換基にして微粒子の状態で存在しているが、線状高分子は溶媒に広がった構造を持って存在している。

線状高分子鎖間を間隙が狭く、溶媒が事実上その間隙を通れないために粘度が増加する。

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